大人の健康遊具⑤
大きな桜の樹の下にGスポット。横田基地のゲート前、国道16号沿いの福生、ではない。反対側のエリア、米兵居住地域。
ゲート脇にはちあきなおみに似た女が店番をしていた駄菓子屋がある。店名は「frontier 」。基地の子どもに英語で返す彼女は異色の大人だった。今の男の年齢と変わらないかもしれない。大人の女がなぜここで店番?性格俳優が出演する映画の一コマのような佇まいだった。三十年前の夏、その「なぜ」はいまだにわからない、わかるような気もした。俺も同じかもしれない。
基地の灯りで夜も空が明るい。「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」。梶井基次郎は書いた。妖しく美しい夜の気配、蒸し暑さにあらがい男は梶井基次郎のような檸檬汗をにじませながら、妖気に煩悶しながら、肢体を力ませ鉄棒を握るのであった。
東京の片隅でfrontier=新天地の経年変化に哀愁を感じつつ。
限りなく立川に近い武蔵村山。