華麗なアウトボクシング、ボクシングセンス溢れる臼井春樹 vs 前世界王者・木村翔を1R75秒でKOした男・王子翔介 “名勝負” フライ級四回戦 2018.10.31.後楽園ホール
10.31.のDANGAN興行で一番の見ごたえは第8試合。
フライ級四回戦。
臼井春樹(赤・八王子中屋、19歳、オーソドックス)VS王子翔介(青・カシアス、27歳、サウスポー)。
臼井の戦績は3戦1勝2分け。
王子の戦績は1戦1勝(1KO)。
負けなし同士の戦い。
王子のデビューは2013年4月、当時22歳。その際のKO勝利以来、リングから遠ざかり、これが五年半ぶりの復帰戦。
試合後、調べて知った。
前世界王者・木村翔(青木)がデビュー戦の相手。
先日、2-0判定で世界防衛戦で田中恒成に敗れるまで(木村翔対田中恒成はWBO年間最高試合)木村はデビュー戦の1敗だけだった。その1敗、木村が負けた男、しかも1R75秒のKOで完敗したのが王子翔介。
事情がありリングから離れていたというが、リング上で非凡なセンスは否応なしに発せられていた。
対する臼井春樹。ハロウィンを意識してか、ドラゴンボールの孫悟空のコスチュームにお面で入場、仮面を脱ぐとスラムダンクの漫画の登場人物のような青年。大学生ボクサー。試合が始まると機敏な動き、身体さばき、華麗なステップワーク、こちらも抜群のセンスが解き放たれていた。
両者、面構え、構えがいい。
序盤、ハイセンスなアウトボクシングの戦い。
鋭いジャブで踏み込む王子。リーチが長くフットワークのセンスを魅せる臼井の懐が深い。王子、しびれを切らし強引にストレートを打つも届かない。
逆に臼井も、王子の鋭く果敢な攻撃に柔軟なステップワークで対応するも、切り返し、先手を打つまでにはいかない。臼井はこれまで負けはないが引き分けが2つ。 抜群のセンスを感じさせるも、今一歩の積極性が引き分けが多い理由か。パンチを華麗にさばくも、王子の復帰への想いが上回り、リング支配権をゆだねてしまっている。
第3ラウンド、試合が動いた。
それまで類まれなディフェンス力を魅せていたが、王子の左ストレートをきれいに食らい、臼井、ダウン。
流れはこのまま王子に行くか、そう思われた。
しかし第4ラウンド、今度は王子が右フックを食らい、ダウン。
最初のダウンはスリップ扱いであったが、あきらかにパンチを食らっていた。王子はすぐに立ち上がったが顔をのぞくと効いていた。すぐさまの臼井の追撃に再びダウン。臼井、最後のラウンドはあとがないだけに攻めに出た。1、2ラウンドの非凡なアウトボクシングセンスに気持ちの強い攻撃性が加算され、迫力のある攻防一体ボクシングを魅せた。
王子、それでも気持ちが切れるところなく迎え打つ。
その後、両者、最後まで戦う。
第1ラウンド、ドロー、あるいは王子。 第2ラウンド、ドロー、あるいは臼井。 第3ラウンド、王子。 第4ラウンド、臼井。
臼井か。
ジャッジ。
37-37
38-37×2
勝者は臼井春樹。
アウトボクシングなハイセンスな対峙から、ダウンの応酬へ。スリリングな名勝負であった。引き分けが続いた臼井は、ダウンを先に取られたこともあり、勝負に出るスタイルが新境地となるか。
五年半ぶりの復帰戦。王子は見事な戦いぶりだった。木村翔を初回75秒で倒した実力。間違いない実力であった。ただ、試合感覚が離れていたか。五年半の間に世界王者になった木村翔。事情がありリングを離れていた王子。二人のデビュー後の歩みを想像したとき、物語を感じるのであった。
ボクシングは、歩みを含めてボクシング。
リングに立ち続けるというのは、それだけですごいことなのである。
臼井春樹はこの日、技能賞を受賞。
以上