日本スーパーフェザー級タイトルマッチ、王者・末吉大vs同級1位・大里拳、白熱リマッチ。後楽園ホール、ボルテージあがる。
日本スーパーフェザー級タイトルマッチ。
王者・末吉大選手(帝拳・28歳・右)四度目の防衛戦。
対するは同級1位・大里拳選手(大鵬・24歳・右)。
両者は昨年二月、対戦。王者・末吉、三回に右ストレートでダウンを喫するが、大里の左瞼負傷でレフリーストップ、それまでのポイント判定で末吉の8回TKO勝利、防衛であった。
再戦。
序盤、末吉の王者の気負い、パンチに力みが見られた。神経質に繊細な威圧と、伸びのあるリードジャブを織り混ぜたプレス、大里を仰け反らせる。力みながらも先手を取りに行く。
176cm、長身の大里がのけぞる、威力あるジャブ。懐に入りこもうと大里が突っ込んで来るところ、王者・末吉は下がりがなからのショートで回転の効いたワンツーフックで迎え撃つ。末吉は攻めているようで呼び込むスタイル。プレス、突き上げるジャブは攻め込むよりも呼び込む戦略の上にある、そう見た。プレスで前に出るがパンチ自体はカウンター主体、瞬時にスウェーしたのち、まとめる連打を見舞う。気負いか気迫か、序盤終了前、プレスでコーナーに追い込み、大里が反撃に出たところを待ち構えて腰の回転の効いた右フック、ダウンを奪う。
中盤、ダウンを奪われ、ポイントで先行された大里、挑戦者としては構図を崩し、流れを変えたい。後がなく攻めるしかない気持ちが、末吉のプレスを破る。次第にプレスに慣れてきたかのよう、大里、ダブルのジャブを基点に攻勢に出る。末吉、突きのジャブが回を重ねるごとに出なくなる。ジャブで突き放さず、プレスとスウェーだけでは呼び込みは機能しなくなる。風穴が空くか否か。大里の右ストレートはオーバーハンド気味のものは何度か入るも、前に突っ込みながらの操出で精度に欠けた。肝心のところで右ストレートがガードに詰まる。縮こまる。また、脇がしまっていないので末吉にかろうじて予測を与えていた。
終盤はどちらも気持ちで一歩も引けない。熱い気持ちが入った撃ち合いに。両陣営の応援団も声援に力が入る。会場のボルテージがあがる。終盤の回は一進一退、大里の右ストレートが入る場面もあった。だが疲労が足にきていた。追い足にかけた。王者・末吉の強打にロープを背にして大里がバランスを場面もあった。末吉、まとめてラッシュにかけるが仕留められず。意地でも引けない、気持ちの入った撃ち合いが最後まで続いた。
95対95ドロー、97対93、96対95、判定2-0で王者・末吉の勝利。
アンダーカードは全日本新人王が三名出場。
昨年のウェルター級全日本新人王・辻本純兵(帝拳)。対吉村鉄也(KG大和)、5回TKO勝利。長身、リーチをいかした懐の深い距離。潜り込もうとガードを固めて前に出るところ、連打を浴びせる。ワンツーボディダブル、ワンツー・アッパーがきれいに決まる。
昨年の全日本ライトフライ級新人王・亀山大輝(ワタナベ・青コーナー)。対する岩田翔吉(帝拳・赤コーナー)はアマエリート。フライ級世界チャンピオン・田中恒成に学生時代、勝ったことがあるという。昨年末、米国でプロデビュー、この試合が国内初戦。
亀山、全日本新人王の称号を上回る前評判の岩田に果敢に攻める。岩田、クレーバーな動き、フットワーク、デフェンス技術が卓越した動き。亀山は気持ちの入ったボクシングを貫く。軽量級ならではのスピーディな試合。亀山のウィービングからの左フックに岩田は対処できていなかった。しかしそれ以外のパンチはすべてさばいていた。岩田、手数は少ないが、的確に見栄えのいいパンチを当てていく。亀山は引かずに終始前に出た。判定3-0で岩田勝利。見ごたえのある試合であった。見栄え対気持ち。判定で白黒はついたが、いい試合であった。
一昨年のライトフライ級の全日本新人王・今川未来(木更津グリーンベイ・左・青コーナー)。対矢島大樹(松田・赤コーナー)。矢島、19戦9勝(4KO)7敗3分。キャリアのある選手、常に前に出てくるタフネス、老獪でねちっこい戦い方である。ウィービングしては飛び込んでフック、くっつく。今川は対処に苦慮していた。しかし終始フォームを崩さずクリーンに戦ってきた今川、判定勝利。顔がはれあがっていたのは矢島のほうであった。判定の難しい組み合わせ、接戦であった。
スーパーフェザー級八回戦、波田大和(帝拳・左・赤コーナー)。アルピウス・マウファニ(インドネシア)。インドネシアのスーパーフェザー級チャンピオンであったが実力差がありすぎた。波田、2回KO勝利。
セミファイナル、スーパーフェザー級八回戦、正木脩也(帝拳・赤コーナー)。韓国スーパーフェザー級1位・リー・ナムジュン(韓国)を迎えての一戦。ナムジュン、技術はないが、タフネス。きれいなボクシングの正木のコンビネーションに対応できないが、再三のボディ攻撃にも耐えた。大ぶりだが、パンチ力は正木よりもある。後半、ガードが甘くなったところをもらいそうになる瞬間もあり、冷や冷やする場面もあったが、終始、正木が試合をコントロール。正木判定3-0勝利。正木のディフェンスのガードのバリエーションは多彩で、センスそのもの。またフットワークが美しい。とくに下がる場面。前足を軸にゆったりと落ち着いて距離をとっているようで、落ち着いているが無駄のない結果スピーディーなステップ。ワンツー、ダブルボディのコンビネーションが得意であった。力点がストレートより三発目に置かれていた。逆にそれがタフネスな相手に慣れさせ、反撃を伺う機会を与えていた。私自身、シンプルなワンツーの重要性を考えさせられた。
帝拳はスーパーフェザー級の技巧派強者を、末吉、正木、波田と三名出場させた。セミファイナルは実力差がある相手であったが、メインのタイトルマッチは白熱した。会場の声援が立証していた。
敬称略。
(了)