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射干



射干(しゃが)の花が実家の庭先に咲く。


仏前に供える。


私はこのアヤメ科の白紫の花が好きだ。


花びらの輪郭が蝶のようで、花弁に濃い紫と橙の模様が浮き立ち、曼陀羅の世界のようにも感じる。






霞が関の官庁で仕事があった。

日比谷公園の地下駐車場に車を停め、噴水広場を抜けて松本楼の前を通り、霞門へ。

大樹の下に射干が群生していた。私は三十代、霞門を通り、霞が関の法曹村へ度々通った。射干の花を自覚したのは初めてだった。


群生の姿は実家の射干とまた異なる表情をみせていた。


風にそよぐ。根が強く、そよぐがふわふわはしていない。葉からは強い生気を感じる。群生すると、葉の強い生命力の上で、白紫の蝶が飛び交うようだ。



今度は自宅の帰路、深夜0時、葛飾清掃工場脇の公園、毎夜、懸垂をした健康遊具。久しぶりに立ち寄ると、足下に射干が外灯の光を受け、そよいでいた。根の強い篠笹の合間から顔を出す。



射干に出合った春。



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