ドレスデンのバッハ「クリスマス・オラトリオ」
日本時間、12月18日26時。ドイツ、ドレスデン聖十字架教会でのバッハ「クリスマ・オラトリオ」。
ドレスデン聖十字架合唱団の少年のコーラル、ドレスデンフィルハーモニー管弦楽団の演奏、そしてソプラノ、アルト、テノール、バス。パートごとの声楽ソリスト。
中世から続く荘厳さや厳格さ、よりは、ドレスデンの土着、郷土の温もりを感じさせる飾り気のないホームタウンの素朴な趣きが強く、温もりが素直に届く。
華美な衣装やショーアップ、オペラ的な演技演出、商業主義的劇場興業の色彩、そういうものからは離れた、教会の日常を、郷土を包み込むフラットな力を感ずる。
クロイツカントル(合唱指揮者)はロデリッヒ・クライレ。1930年から71年にクロイツカントルを務めたルドルフ・マウエルベルガー(1889-1971年)が、クリスマスに音楽礼拝をおこなうようになったことから、ドレスデンでは毎年12月、地元の教会でバッハの「クリスマス・オラトリオ」を行っている。中世の伝統が、20世紀に明確に自意識として明確化されたということだろうか。
その「クリスマス・オラトリオ」第1部より第3部、丑三つ時、ドレスデン聖十字架合唱団のFacebookでライブ中継で鑑賞する機会に恵まれた。
ドレスデン聖十字架合唱団は13世紀よりの継続である。バッハ自身より、もちろん、近代(1870年)創立の管弦楽団よりも深淵な歴史である。
レチタティーボォと呼ばれる男声の朗唱の合間に少年たちのコラール、大人も交えた混声合唱、ときおりソリストたちのアリア、二重唱。
教会の聴衆も地元の人々か、着飾った人もなく普段着の装い。淡々と、粛々と、温もりのある1時間半あまりであった。教会カンタータの延長としてのクリスマス・オラトリオ。
バッハの「クリスマス・オラトリオ」は、今も様々な管弦楽団、合唱団のコンビで演奏されるが、そこに少年合唱団が入ると奥行きが何倍も違うように感じる。しかも、バッハより五百年あまり老舗の今なおコレギウム生活を送る教会少年合唱団が唄うのである。歴史は歴史であるが、その重み、巧みさよりも純度が勝るコーラルワーク。伝統に打ちひしがれていない伸びやかさを感じた。また、周りの大人たちもそのことを分かっている感じが良い。教会少年合唱団、ボーイソプラノの存在感。
派手さ、地味さ、対極の向こう側にあるものを目指している心意気を感じる。歌詞の意味内容は把握していないが、日々の生活に教会という舞台装置(スイッチ)がある西欧の伝統の良きところか。純度のある声を聴くには、いにしえより続く教会という舞台装置は最高の舞台であると素直に思えたのであった。
中年にボーイソプラノは染み るのである。
(了)
映像はド レスデン聖十字架合唱団の2015、2016、2017のサムネール。
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