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金町、なみなみ厚口グラス酒



夕刻、立石、宮田ジムの忘年会に参加。


会開始までの持て余した時間、リングにあがる。

三年前、出稽古に来たときはサンドバック止まりであった。

リングにはあがれず。今もそのまま時間が止まっている。


隣席の会員。

「トレーナー、ホストみたいな盛り上げ方っ」

「会長もプロボクサーには厳しいですが、ツッコミ女子力高いですね」

「そうそう!そうなの」

テンションMAXの坩堝のなか、ひとしきり楽しい交遊。



2時間半あまりで退座し、金町に戻り、沿線の編集者と待ち合わせ、納品する。


今風のオーガニックバルに飛び込み慰労会。

ボクシングの系譜学的構造をめぐる会話に華を咲かせつつ、ボクサー個々人の個性に思いをいたす。こういうボクシング藝術談義ができる友ありて有り難き哉。


友。

「先日、忘年会で乗り過ごして、気づいたら山手線の終点、品川駅。久々にやらかしましたね。日本酒は危険ですね」

「都内で日本酒は禁物、家から半径2キロ以上離れた日本酒は危険です」

「ですね」

そんな話もする。



「やっぱり、サクッともう一軒、行きましょう」

入った飲み屋でもつ焼きに熱燗。


受け皿までなみなみと厚口グラス。


焼き場の若大将。

「塩にしますか、タレにしますか」

「タレで。あっ、でもどちらがおすすめですか」

「そりゃあ塩です」

「じゃあ塩で」

少々ぶぜんとした顔つきになった横から、

「永井さんですよね!僕です。マオと一緒にお世話になった!〇〇です」

若者が声をかける。

「おお、元気か!驚いたぁ。お前いい感じにがっしりしたまま痩せて、いい男になったなっ」

高校生になった元ジムメイトがバイトをしていた。

「ちょうど、マオの友だちのお母さんが永井さんと友だちで、こないだマオが永井さんのこと話してくれたよって言っていたんだよ。なんだか話がわかりにくいな。ようは世間は狭いってこと。マオにもよろしくな!」

「はい!」

「声かけてくれて、ほんとにうれしいよ、ありがとな」

「はい!」

グータッチ。

若大将の眉間が和らぐ。


サクッと解散。

サクッとバスに乗車。目を開けたら乗り過ごし、終点、三郷中央駅。


日本酒は危険。


徒歩で帰る。


街が秩序だちすぎて無個性、気配がなく、方向が全くわからない。

とりあえずの目印はつくばエキスプレスの橋げたと環の橋げたの交差。

勘で歩き回るが、ことごとく間違う。

深夜営業のスーパーで、柿の種チョコレートを買い、レジ係に外環の方向を聞く。


なんとか外環にたどりつく。


金町は拍子木をならして歩く火の用心。

三郷中央は雇われた警備員が自転車でパトロール。


やっぱりなみなみ。

年の瀬風情に思いを来す。














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