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ザ・ビーチボーイズ「God only knows」とブルックナー「弦楽五重奏曲」第三楽章。内声部の厚み。

ブルックナーの「弦楽五重奏曲」第三楽章を聴くようになった。


ザ・ビーチボーイズの「God only knows」を思わせる。



緩徐楽章の第三楽章。緩やかな起伏を繰り返しながらヴィオラとチェロが奏でる長い旋律、そこにヴァイオリンが縦のリズムを刻む場面がある。その部分が「God only knows」のイントロの旋律を思わせる。間奏でも繰り返される曲を形作る旋律だ。


私は20代後半、「God only knows」を愛聴した。


この基調として奏でられる、ヴィオラとチェロ、弦楽器の低音部主体の穏やかな旋律が、コーラスワーク、多重録音がもたらすビーチボーイズの音楽の厚みに通じているように感じる。


弦楽五重奏の編成はヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ1。

室内楽はトリオやカルテットが主流だが、五重奏であることが大きいのだろう。

弦楽の音の厚みが温もりのある緩徐を生み出し、柔らかなふくらみを生んでいる。


Wall of sound。それすなわち、Warmth of sound。

音の壁が温もりとなっている。




ビーチボーイズの作曲を担当したブライアン・ウィルソンが、サーフミュージック、ドライブミュージックといった当時の若者文化に沿った外向的な作曲から、自身に内向しスタジオワークによる作曲へと移行した時期の名曲。その意味で、室内楽とスタジオワークミュージックという内向的な環境も共通項だ。


「God only knows」はメインボーカル、カール・ウィルソンの少年合唱団員のようなファルセットのソプラノボイスが印象的で、内声部を基調としながらもポップミュージックらしく上に突き抜ける情緒のふり幅は大きいが、曲の基調だけに着目すると相似しているように思えるのだ。ブルックナーのほうがだいぶゆったりしているが、「God only knows」を内声部に厚みを持たせる弦楽奏が演奏するときっと同じような印象になる。


両者からはともに素朴な民俗的な気配を感じる。God only knows = 神のみぞ知る、といっても一神教的な気配ではないのは、コーラスのように天上音楽的な高揚感に重心を置かない、ブライアン・ウィルソンの内声部の厚みゆえではないかと思う。ブルックナーはオーストリアの村の出身。曲の主題をはっきりさせない彼は、内声部の厚みにこそ神が宿ると思っていたのではないか。


ブルックナー、ザ・ビーチボーイズ、両者とも「内声部の厚み」が、温もりのあるハーモニーとなっている。内声部の厚みは、聴けば聴くほどに浸透する。心に広がりと奥行きをもたらす。


私の中でブルックナーとブライアン・ウィルソンの音楽的抒情性が重なった瞬間。


いつの日か「God only knows」の緩徐的な弦楽五重奏を聴いてみたい。




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