マイペースの結晶。好楽師匠が開いた「池之端しのぶ亭」
三遊亭好楽師匠、撮影致しました。
「ピンクの小粒好楽(コーラック)」。
笑点大喜利、三遊亭小遊三師匠と兄弟子・林家木久扇師匠に挟まれた安定の二枠。素の脇侍。「好楽さんに座布団あげて」。ややはすに、膝頭にたてた扇子に両手を重ね、肩をさげてやや斜にしなに座し、お茶の間をまっつぐ見すえたキメ顔。
ピンクつまらない、ピンつまはお門違いでした。
言問通りと不忍通りが交わる根津の住宅街、自宅一階を改造し「池之端しのぶ亭」を開く。
寺が点在する通り、横は小さな神社、向かいは鰻屋、江戸の町の成り立ちがまだかすかに感ぜられる場所に作られた小さな箱。二つ目や若手真打育成のための独演会や興行の場。今や円楽一門会会長も権威ぶらず、流派を越えて交流する。
偉大なるマイペース、が生んだ落語へのさりげない恩返し。
酒毎日一升、二十三回の破門。芸に厳しい故・林家彦六(八代目正蔵)師匠にそれでも可愛がられ、彦六死後、故・五代目三遊亭圓楽門下に入り、林家九蔵から三遊亭好楽に。五代目圓楽師匠と笑点に出演。彦六師匠の兄弟子・木久扇師匠と並ぶようになった。
かつて五代目圓楽師匠が落語協会脱退後に作り、閉鎖した寄席処「若竹」という存在があった。それを意識してかせずかわからない。さりげなく開いた箱。
弟子の三遊亭兼好師匠、古典落語の本格、気風がよく軽妙、力の抜けた軽快で小気味よいテンポ、面白味が最高、声も良いときた、老若男女、誰しも一聴で楽しめる高座。笑点メンバーで生粋の古典落語の弟子を持つのは好楽師匠。好楽師匠の陽の気は好楽一門の系譜となる。否定、ダメ出しから入らない、そう思わせてくれる人当たり。妻子持ち脱サラの入門を認めた好楽師匠。好楽師匠なくして兼好師匠生まれてなかりしと合点。
池之端しのぶ亭のネタ台帳。好楽師匠の字は淡い墨汁でためらいのない線、さっとしているが角がたたない柔和な味わい。
表札も出さない家が増える社会。自宅を寄席に。オープンマインドが長屋を噺の舞台とする落語家らしいさりげない矜持。
「おとなの流儀」最新号。池之端しのぶ亭を雑誌にて本邦初特集する天賦雑誌屋本舗の臭覚、恐れ入谷の鬼子母神。しのぶ亭の見開き扉裁ち落とし写真。雑誌稼業にとり、この上なき冥利に尽きる。
今、ひそかに池之端といえばしのぶ亭なのであります。