山、畑初め。キウイ棚の剪定。熊も人も冬眠あけ。
寒間、冬日和。
気温十四度、風なく野良仕事に格好の天気。それでも山間の畑に着けば、霜で大地が盛り上がり、日陰に雪が残る。
昨年の暮れ、剪定できなかったキウイの樹木。柵を越え、下の段の畑にしなだれかかり、際の山茶花の枝に蔓が巻き付いている。脚立でキウイ棚にあがる。下の畑も今日が畑初めであった。耕運の手を休めて声をもらう。高いところから挨拶。越年の苗の状況、家族の元気を尋ね合う。
剪定を受け持つのは初めてである。太く固く乾燥した枝木。老枝も若枝もいっしょくたに絡まり、四方八方に生え散らかしている。手入れの前に心が折れる。取り掛かってすぐ、案の定、足場の上で攻めあぐねる。
はかがいかない。
そこに熊出没注意の広報が鳴る。
耳を立てるとこの集落の名を報せる。
手につかない。中止。棚を降りて行政に電話で問い合わせる。先ほどの広報の声、六十代の男性担当者。ハイカーの目撃で、熊は親子でなかったから大丈夫だろうとのこと。それを聞き、気を取り直してまた取りかかるが時すでに日暮れ、半端に終わる。
暖かさに誘われ、畑に出たものの本調子に程遠い。
熊も人もまた冬眠あけ。
帰り際、隣の敷地に紅梅が咲いていた。昨年は梅の果実がうちの畑に敷き詰めるように落ち、害に苦しむ。何年も放置された空き家。剪定することもなく大木となった。
剪定の労苦、重大さを身をもって知る。
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