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鶯谷のコップ酒



鶯谷駅南口。


山手線路をまたぐ橋上駅舎、改札を出れば左右に首を振る。


右手に上野のお山。左手にラブホテル街。聖と俗の分断か、聖と性の橋渡しか。昨今は不倫も文化という詭弁家が社会で幅をきかせているらしいから、後者のようにも思えてくる。これがもし、不倫も教育だとして、学校で教えるようなことになれば世も末だが、詭弁家はそこまで論を通すことはしないのだろう。聖と俗、どちらが倫理的であるかわかりはしない。


左手に曲がる。


焼き鳥屋へ。立ち呑みから、奥の空いたテーブルへ、メートルがあがる。


徹頭徹尾、燗酒。


ぬる燗か上燗か。気づけばはや、ゆらゆらを眺める時節になった。

時節を外した枝豆がよく冷えている。燗と枝豆。夏と冬の舌渡し。


厚みのある硝子、厚底の面取りコップが手のひらになじむ。

受け皿やら枡を置くまでもない、机上にコツン、ぶっきらぼうなコップ。

だが、温みがぶっきらぼうを中和する。

荒物にやさしさを感じる燗酒のひととき。




酔いはしない。だが、傘を忘れるほどには酔う。

自分の酔いは、決まってそうだ。


傘がない。


中秋の名月も昔、冷たい雨が靴底を濡らす。







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